小型攪拌培養装置 ミニジャ−
この培養器はスピンナ−フラスコの改良から始まりました。
500MLのガラス容器の底に突起をつけ、上部の蓋の間にマグネット撹拌子を取り付けた軸を外部からのマグネットスタ−ラ−で回転させました。
マグネットスタ−ラに水槽を取付、その中にガラス容器をセットし温度を設定する簡易的な装置で、ガラス容器をオ−トクレーブで滅菌処理するもので操作としては容易でした。
当時、攪拌培養装置は20L容量の蒸気滅菌を行うもので、装置としては規模が大きく、費用も掛かるもので、何処の研究室にも在るという培養装置ではありませんでした。
この為 販売当初は研究室の机の上で廉価で攪拌培養が行えると云う装置で、確かに液は攪拌する程度のものでしたが、それなりの需要がありました。
マグネット撹拌子をタ−ビン羽根に変え、リングスパ−ジャ−を取付、培地の粘性に耐える攪拌を保つために上部から直接に攪拌軸を回転させ、軸受はメカニカルシ−ルを取付けた構造とし、ミニジャ−の原形はこの時に出来上がりました。
兼用型振盪培養機 MR
当初、振盪機は最低でも50本架の大きさの物が販売されていました。
しかし、汎用理化学機器メ−カ−が、小型の振盪機を販売するようになり、小型機に対しては半ば無視をしていましたが、大学など、それなりの需要があったようで、いわしやでも小型機種を製造しようという事になりました。
当然、当社は小型機種では後発となります。
振盪培養機の回転式と往復式は、まったく別個のメカニズムと考えられていました。
この機構は平行する2軸が直角に交差する振盪機と云う特許となりました。しかし、実際に製品化するまでにはいろいろな苦労がありました。
フラスコ培養で三角フラスコと坂口フラスコを併用している会社は皆無に近いことで、兼用機としての需要はさほどありません、そのため販売が伸びず、結果として機械の完成度が高くはありませんでした。
また使用する側に立った使い勝手が製品に反映されず、この位の不便さは研究員が我慢をして使うべきと、むしろ作った側の理論が先行していました。
MRの最大のピンチは選定理由にして1号機を納入したある製薬会社で起きました。前後に押しながら左右に動く、肝心の機構の軸受と組合せるシャフトにトラブルをおこし、機械が運転できず、研究に支障をきたしはじめました。
毎日のように修理にかよいましたが、ある日、工務課長が、この機械の考え方は間違っていない、代替機を持ってきて研究は続ける、この間にじっくり作り直しなさいといわれました。軸受をボ−ルから、ドライメタルに変更し、ある大学の培養室に試運転として設置させていただき、長期間の運転ができ、完成度はあがっていきました。機構として、重量のかかる大型機種には向かなかったのかもしれません。その後、折からのバイオテクノロジ−のブ−ムに乗り、RMR―S―20として、単一機種としは最大の販売数になりました。特許が切れてからは多くの会社がこの機構を採用されています。
多連槽振盪培養機・MLU
当初はどこの会社にも振盪機は数多くあるので、いまさら4連槽でもないだろうと言われましたが、一回づつの培養では、プレ培養後の菌をストックする必要があり、この影響を排除するには複数の培養条件を一度に開始することが重要であるとのアピ−ルが効いたのか、販売の主力になりました。
しかし、培養時間、回転数の設定と大型機種と同様の運転が頻繁になり、思わぬトラブルが起きました。回転数が200rpmを超えると共振現象からか定期的に揺れが起き、恒温槽に亀裂が発生する、1基の冷凍機で複数の恒温槽の冷却を行うため、個々の温度設定の差が大きい時、途中で培養温度を変更した時等、温度設定にトラブルが生じました。振動対策としては、ボデ−の剛性を高める、シェ−カ−ユニット自体からの振動を軽減する、そのためにプ−リ−の回転方向と振盪架台の回転方向を逆回転とし、発生するモ−メントの相殺をはかる等の工夫を行いましたが、結論として恒温槽部分の骨組みを強固なものにするという事になりました。冷却は小型の冷凍機を個々の恒温槽に専用に設定する事で対処しました。ある、研究機関から交通手段の途絶えた環境で、メンテナンスを可能とする振盪機を考えてほしいと云われ、その答えとして、MLUを現在のユニット式としました。その結果、剛性の高いフレ−ムに各機能をユニットとして組み合わせる事ができ、予算によっては将来の増設が可能となりました。
温度傾斜振盪培養機・GT
フラスコ内の液温が発酵熱により上昇しますが、恒温槽を循環する膨大な循環風に希釈されて、温度センサ−には届きません。
培養温度とはこの循環風の温度を制御し、フラスコ内培地温度を制御している訳ではありません。
振盪機と測定装置を結ぶケーブルは消耗部品とすることで何とか解決し、納入する事ができました。
試験管振盪培養機・TC
試験管振盪機には試験管を取り付ける方法が二種類あります。
その作業に時間が掛かるため、この籠を直接に振盪機にセットする事が出来れば時間の節約ができるという、ある製薬会社研究所からの要望で試験管籠を直接に取り付ける方法を開発しました。
スライド収納パネル
人の腕の長さをおおよそ60pとして、それ以上の距離があるとフラスコ固定バネに腕が届かずフラスコの着脱ができせん、このため装置の反対側にも扉を取り付ける必要がありました。
しかし、フラスコ着脱時以外この空間は無駄なスペ−スです。
スム−スに引き出すことが出来かつ運転時にはしっかり固定されるこの事が重要です。
パネル架台をつくり、両端に既製のスライドレ−ルを取り付けて一応の完成としました。
工具を用いて作業をすることは君たちには簡単だろうが、研究者の多くは慣れない作業でありネジの締め付けは個人差が生じると不評で改善が指示され、結局フラスコパネルは架台にボルトで固定する以前の形に戻りました。
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